屋根にはどんな種類があるの?形状別メリット・デメリットとメンテナンス方法を解説
住宅街を歩いていると、家によって様々な屋根の形があることが分かります。
家を保護し、外観のイメージを決定する屋根について知っておくことは、快適な暮らしを長く続けるために大切です。
「屋根の形状にはどんな種類があるの?」
「屋根のメンテナンスにはどんな方法があるの?」
上記のような疑問がある人に向けて、屋根の見分け方の基本的な情報から、修理や葺き替えの工法まで詳しく解説していきます。
業者に依頼する場合の注意点もまとめていますので、ぜひ最後まで目を通してください。
目次
▼代表的な9種類の屋根形状の特徴とメンテナンス方法
▼屋根形状の種類を問わないメンテナンス方法
▼自宅の屋根形状から種類を確認して適切なメンテナンスをしよう
代表的な9種類の屋根形状の特徴とメンテナンス方法
屋根の種類は数多くありますが、日本で採用されている代表的な9種にしぼって解説していきます。
切妻屋根
切妻屋根は開いた本をかぶせたような形の、いわゆる三角屋根を指します。
日本では一般住宅でよく見られる形です。
シンプルな構造のため、安価で抑えることができます。
反面、デザイン性には乏しく個性が出しづらいのが難点です。
傾斜があるため水が溜まりにくく、雨漏りのリスクは低いです。
屋根面積が大きくとれるので、南方に斜面があるなら、ソーラーパネルの設置に向いています。
メンテナンスの手間は多くありませんが、妻側(屋根がかかっていない側)の外壁は風雨や日光に直接されるため劣化しやすい点に注意が必要です。
寄棟屋根
切妻屋根と同様、日本ではよく見られる屋根の形です。
4つの面で構成されており、地面に対して水平な最上部の棟を「大棟(おおむね)」と呼びます。
大棟に対し、斜めに伸びる傾斜がある棟が「隅棟(すみむね)」もしくは「降(くだ)り棟」です。
全方向に面があるため、耐風性が高く、外壁を風雨や日光から守ることができます。
その反面、設計コストやメンテナンス費用は切妻屋根よりも少し高めになります。
棟が多いので、つなぎ目部分からの雨漏れに注意が必要です。
はかま腰屋根
切妻屋根の妻側に、寄棟屋根のように小さな屋根面がつけられた形です。
半切妻屋根、ドイツ屋根とも呼ばれ、シャープでおしゃれな外観になります。
屋根の高さが調整できるため、道路斜線や日影規制などの法的な制約を回避するために採用されることが多いです。
屋根本体を低くできる分、室内面積を広くとることができるのが大きなメリットです。
一方、寄棟と同様に、棟が多くなるため雨漏りのリスクがあります。
片流れ屋根
一方の斜面だけで構成されるのが片流れ屋根です。
しゃれたデザインのため、近年人気です。
屋根面積を広くとれるので、ソーラーパネルの設置にも向いています。
構造がシンプルなため設置コストは安価で、メンテナンスの手間もかかりません。
ただし、片側だけに雨水が流れるので、負担がかかりやすい雨樋の点検が大切です。
方形屋根
四角錐(ピラミッド)型の屋根です。
方形(ほうぎょう)屋根と呼びます。
四方に面があるため、雨や雪を分散され、外壁が劣化しにくいです。
寄棟よりも棟が少ないので、雨漏りのリスクも小さいです。
形が限定されるため、正方形の形状の部屋の上にしか設置できません。
頑丈でメンテナンスの手間はかかりませんが、設置コストは高いです。
三角形の斜面で構成されているので、ソーラーパネルには向かないでしょう。
入母屋屋根
入母屋(いりもや)屋根は、寄棟と切妻を組み合わせたような形をしています。
瓦との相性が良く、和風建築によく見られます。
耐風性や断熱性があり、通気性にも優れています。
一方、複雑な形状のために設置コストは高いです。
つなぎ目が多いので、雨漏れのリスクもあります。
陸屋根
平らな形状の屋根が、陸屋根(りくやね・ろくやね)です。
屋上が広くとれるため、ソーラーパネルの設置に向いています。
ただし、斜め上空に向けるための架台を取り付ける必要があります。
屋上に上がっての作業も容易で、メンテナンスの手間はかかりません。
一方、傾斜がないため、雨水や雪が貯まってしまうのが難点です。
北海道や東北などの豪雪地帯では、中央部分に雪を解かすダクトが設置する場合もあります。
水はけを良くするため、屋上部分をウレタンやアスファルトで防水加工します。
バタフライ屋根
屋根の端が高く、中央に向かって低くなるというV字状の屋根です。
雪下ろしの手間がなくなるため、スノーダクトを設置して豪雪地帯で採用する場合があります。
コストが高く、中央部分に雨水や雪が溜まるので排雪や排水ができないと雨漏りしやすい屋根でもあります。
へこんだ中央部分に雪を解かす「スノーダクト」を設置することで雨雪の排水ができます。
越屋根
切妻屋根の上に小さな切妻屋根を重ねた形状が越屋根(こしやね)です。
上側の屋根には採光のために窓を取り付けることが多いです。
採光性の他、断熱性・通気性に優れることも2段屋根のメリットです。
一方、形が複雑なため、設置コストもメンテナンス費用も高いです。
つなぎ目が多く、雨漏りには注意が必要です。
屋根形状の種類を問わないメンテナンス方法
快適な暮らしを長く維持するためにも、屋根のメンテナンスは重要です。
屋根の耐用年数は使用されている屋根材によって変わります。
建築から15年ほど経過しているなら、状態をチェックしてみるといいでしょう。
外部に依頼する場合も、悪徳業者に騙されないよう、修理の費用相場や工法について知っておく必要があります。
部分修理
瓦の一部が飛んでしまった、雨樋が壊れたといった部分的な補修を説明していきます。
屋根の一部が破損している場合、瓦であれば取り換えるか、隙間を埋める必要があります。
ひびや穴を埋めるゴム状の材料を「コーキング」といいます。
材料費だけなら数千円ですが、業者に依頼すると人件費が加わって10~20万円程度かかります。
次に、板金や雨樋が破損した場合の補修です。
棟の頂上や端を保護する部分を「板金」といいます。
板金が壊れていると、そこから雨水が侵入して雨漏りの原因となります。
板金や雨樋いといった大きい部材の交換には20~30万円ほどかかります。
強風や雪・ひょうなどにより屋根が破損した場合、火災保険が適用できる可能性があるため業者に相談してみましょう。
ただし、修理費用が20万円以下であったり、破損から3年以上経過していたりすると保険の適用は難しくなります。
自宅の火災保険の要件はよくチェックしておきましょう。
雨漏り
雨漏りが起こる原因はさまざまです。
瓦の一部が破損していたり、屋根材が浮き上がったりしていると、その隙間から雨水が侵入します。
特に雨漏りは「板金」の劣化が原因であることが多いです。
板金の素材にはガルバリウム鋼板など、錆びに強いものを選ぶことが大切です。
屋根全体が古くなっている場合、部分的に補修してもまた他の箇所に雨水が流れてそこから雨漏りが発生する、というケースがあります。
どこが雨漏りの原因になっているかを見極めるのは素人には難しいので、無理せず専門の業者に頼みましょう。
なかには適当にコーキングを済ませる業者もいます。
実績があって原因の箇所を写真に撮って提示してくれる誠実な業者を選びましょう。
経年劣化がひどければ、部分的な補修よりも葺き替えを検討した方が良いでしょう。
葺き替え
下地から素材まで、まるごと屋根を取り換えることを葺き替えと言います。
屋根の損傷が激しい場合、葺き替えを検討しましょう。
屋根を新しいデザインにすることで、家の外観イメージをガラッと変えられます。
下地部分の防水や野地板まで修繕するため、家の寿命を延ばすことにもつながるでしょう。
葺き替えは大規模な工事となるため、コストは高くなり、工期も長いです。
新しく付け替える屋根には、スレート屋根や金属屋根がよく採用されます。
スレートや金属の屋根は軽量なため、家の耐震性を上げることができます。
屋根が軽いほど、家の重心が安定し、地震により家屋が倒壊する危険も小さくなります。
特に金属屋根の場合、強風で飛ばされるリスクも小さいです。
台風や地震が多い日本では、軽量な屋根にするのは有効な災害対策と言えます。
葺き替えの費用は、新しい屋根の施工費が1平方メートル当たり8,000~15,000円。
これに古い屋根の撤去費用などが加わりますので、屋根面積100平方メートルの住宅でしたら、総額で100~200万円ほどになります。
葺き替え工事の価格を決めるのは屋根の素材と形状です。
屋根の傾斜が急であったり、形状が複雑であったりすると、施工費用は高くなります。
安価な素材はスレートですが、耐震性や耐用年数を求めるのなら金属屋根のほうが好ましいでしょう。
また既存の屋根がアスベストを含んでいた場合、別で処理費用が必要となります。
カバー工法
すでにある屋根の上に新しい屋根を重ねる方法をカバー工法と言います。
カバー工法のメリットとして、解体や処分の費用が掛からないためコストが安いこと、工期が短期間で済むことが挙げられます。
また、屋根が二重になりますから、家屋の遮音性や断熱性が向上します。
新しくつける屋根の素材は、軽量なスレート屋根か金属屋根が一般的です。
カバー工法の費用相場は、100平方メートルの屋根で80~180万円です。
解体費用がかからず、屋根の形状が決まっている分、工賃の値段は屋根材の種類によるところが大きいです。
金属屋根では安価で頑丈なガルバリウム鋼板がよく用いられます。
スレート屋根を使う場合は、種類が豊富でデザインもバリエーションがあるので、複数から比較検討すると良いでしょう。
注意しておきたいのが、カバー工法ができないケースです。
たとえば下地が腐っている場合は、屋根を重ねてもそのままなので雨漏りのリスクが残るでしょう。
雨漏りリスクが残るのではカバー工法は適していません。
経年劣化で家屋の耐震性が下がっている場合も危険です。
結果的に葺き替えにした方が安くなることもありますので、まずは屋根の現状を詳しく調べることが大切です。
カバー工法の施工にあたっては、実際に屋根にのぼって細かくチェックしてくれて、要望を聞いた上で最適な方法を提案してくれる業者を選びましょう。
塗装
屋根の塗料が剥がれたり色褪せしたりしている場合、塗装を検討しましょう。
塗装には見栄えだけの問題ではなく、家を保護するという重要な役割があります。
塗料の剥がれを放置していると、そこから屋根や下地の劣化が進み、結果的に大規模な工事をすることになるおそれもあるでしょう。
塗装の費用は100平方メートルで50~70万円ほどです。
塗料のほかに足場の設置や養生費用などがかかります。
屋根と一緒に外壁の塗装も行えば、足場代は1回分で済むので得となるでしょう。
屋根材の種類によっては塗装の方法にも違いが出ます。
スレートはカラーバリエーションが豊富ですが、経年劣化しやすく色褪せの危険があります。
雨水が隙間に侵入するのを防ぐために、スレート同士の隙間を空ける「縁切り」が必須です。
瓦の場合ですと、セメントやコンクリート製の瓦は塗料での保護が必要です。
ただし、古い和風建築に多い「粘土瓦」は耐久性が強く紫外線への耐性も高いので塗装は不要です。
金属屋根は、塗料の剥がれを放置しているとそこから錆びが進行して雨漏れの原因となるでしょう。
屋根の塗装は危険が大きく、また専門的な知識も必要になるので、塗装業者に依頼することをおすすめします。
塗料が飛ばないよう、マスキングなどの養生を丁寧に行ってくれる業者を選びましょう。
自宅の屋根形状から種類を確認して適切なメンテナンスをしよう
家を保護する大事な部分でありながら、屋根は間近で観察して細かくチェックすることが難しいです。
そのため、依頼者の無知につけこんで修理箇所を捏造したり、ずさんな施工を行ったりするリフォーム業者がいます。
本記事で解説した知識をふまえれば、業者に依頼する際も細かいところまで確認し、安心して任せることができるでしょう。
記事監修者紹介
![]() 【一級建築士】登立 健一 株式会社ゼンシンダンのwebサイト監修の他、一般社団法人 全国建物診断サービスの記事も監修。 |